圧し潰されて固くなった敷き布団。 重い真綿の掛け布団。 ガサゴソという耳障りな音に、中途半端な高さと固さの蕎麦殻枕により、不快度数 90%を遥かに超えたコラボレーションで、蓄積疲労している身体の疲れは、全く取れましぇんでした。 軋む肩と重い足腰(霊的 !? )を引きずりながら、宿とは別棟の道具置き場の小屋まで歩き、そそくさと釣りの様装へと変身し、バッカンやら竿ケース等の一式を、とても素敵な幌馬車風軽トラの荷台に積み込み、島一番ハイカラな瀬渡船が係留している港まで、ブルルル〜ンと運んで行ったのです。
少々脱線しますが…(脱線その壱)
港の脇にある小高い山からは、“綺麗で冷たくて美味しいと云われている天然水”が、コンコン(魂々 !? )と湧き出しているのです。
ハイキングや観光等をされている方々が…
『とても冷たくて気持ちいぃ』
『美味しぃ』
『あぁぁ、生き返ったぁ』
などと言いながら、飲んでおられる光景に、サムタイム時々、遭遇する事があります。
その“冷たくて美味しい”・“生き返る”という水が湧き出ている小高い山には、ちょっとした秘密が隠されているのです。
その隠された秘密というのは、山の五合目から八合目辺りにかけて、綺麗に整地をされて拓けている場所があるのですが、そこは来世へと旅立たれて逝かれた島民の方々が、荼毘に付されないままのお姿で、安らかに眠られている場所となっているのです。
更に墓地周りの斜面の余った土地には、有機肥料と湧き水をタップリ与えられた、肥えた畑になっているのです。
ということは…
地上から浸透した雨水や露などに、亡骸から解け出したタンパク質・リン・酸・カルシウム・カリウム等と、永年に渡って畑に染み込んだ有機肥料とが、巧いこと地中で混ざり合い、濾過と貯留をしている層では、ミイラだかミネラルだかが微妙に溶け込み、さぞかし美味しい“背筋も凍る程”の冷い水(霊水 !? )に仕上がり、湧き出しているという事になっているのだと思われます!
あっ、また少しだけ話が逸れますが… (脱線その弐)
このハイカラな船(長幸丸)の船長で宿(民宿亀屋)の経営者でもある、通称『こうちゃん』の容姿ですが、アンデスの山岳部族の人々に激似ですので、一度見たら脳裏と瞼の裏へ強烈に焼き付き、暫くの間は忘れる事が、できなくなってしまうと思いますよ。
話しを戻し…
掻き集めておいた頼りない情報も踏まえた上で、当日の状況と自分のカンとを摺り合わせた結果 !? 、港から北へ約 5 分ほど走った所にある、『ナベ島』へ渡礁をする事にしました。
渡礁後は先ず、ゼリー状の栄養補給剤を吸飲し、チーカマ(オカマのチーママ !? )とフルーツゼリーを食べ、明るくなるのを見計らいながら、ゆっくりと仕掛け作りを始めたのです。
(本日の仕掛け)
竿 1.75 号・ 3 号 200m を巻いた 3000 番のリール。
ウキは“標”イエローの 00 ・カラークッションとスイベル 7 号。
フロロカーボンハリス 3 号 3 ヒロ半。
ハリスの真ん中にガン玉 8 番を一つ打ち、鉤は銀色のヒネリ無し伊勢尼 9 号。
案外とシンプルな仕掛けなんです。
どっこらしょと重い腰を上げ、飲み物2本を玉網に入れて、仕掛けを通し終えた竿と、玉の柄とバッカンを持ち、ゲンを担いで初日に釣り上げた南西角(裏鬼門)の釣り座へと、蹴躓きながら移動をしてみました。
パッと目の前に広がる海を見ると、沖は左から右へと流れているが、瀬際 20m 近辺から当てて来ていることが一目瞭然でした。
取り敢えず、ハエ根の先端から延びている沈み根の影響で、どの辺りで潮の角度が変わっているのか確認をしたくて、コマセは入れずに沈み根先端の際に仕掛けを投入し、潮流等の様子を確認してみたのです。(自分、不器用ですから!)
下調べをした事により、ゆったりと当てて来ている潮が、ハエ根先端部分の手前 5m 位の所から、右沖側へ反れて行っている事が分かりました。
確認事項も終えたところで、いよいよ実釣の開始!
足下から縦にパラパラとコマセを撒き、更にその先の潮上にコマセを追加して撒いてみると、一斉に近寄ってくるエサ取り達が、何気に避け気味にしている箇所が有る様に見えたのです。
つづけて同じようにパラパラとコマセを入れ、更に数回ほど撒き散らす様にしてみると、先ほどと同じ様にコマセにつられたフグ等が、一斉に移動をするのですが、行きかけて戻って来る箇所の有る事が、ハッキリクッキリ分かりました。
『ウヒョヒョ』と想いながら、フグ等が避けている箇所の潮上へ仕掛けを入れ、ある程度流してから静かに上げてみると、刺し餌が残って来たのです!
ヤッパし !!
コマセを同調子で打ちながら、『真鯛が底付近でウロウロしているので、餌取りが恐怖を感じてしまい、立ち入る事のできない箇所が生じたんだな!』
と思いながら、というよりも完全に決め付けて、『それではどの辺が境界線になるんだろぅ』という疑問をクリアするため、あえて少しズラした所に仕掛けを入れてみたのです。
仕掛けが落ち着いて流れ出したころに、道糸がスぅ〜と直線になるアタリが来たので、静かに引き合わせてみましたが、案の定、鉤ごと餌を取られてしまいました。(鉤屋からの回し者の仕業か !? )
『…ちっ』
眉間に縦皺を寄せて口元をひん曲げながら、親指と人差し指でハリスを挟み、滑らせながら陽に照らし、噛み痕や傷等の確認をした後、慎重かつ丁寧に鉤を結び、餌取りが気を遣っている場所付近に、仕掛けを静かに投入してみたのです。
ハリスが立ってウキが抑えられ、海面下でチラチラと沈下しながら浮遊していたウキが、神隠しにでも遭ったかの様に消え去り、撓んでいた道糸が一直線に張ったのです。
しかし予想に反して竿先に来るはずのアタリがなかったので、『刺し餌を喰わえた真鯛が上昇し、手前にゆっくりと移動したのか?』
『それともエサ取りの仕業か?』
などと楽観的に思いつつ、ノンキに仕掛けを上げてみると、刺し餌の両端が無くなり、真ん中が潰れた感じで残って来たではありませんか。
ヤツは居る!
そう確信をして(信じなければヤッテられないのが現状)、刺し餌を付けて再投入してみると、仕掛けが馴染んで流れる前に、強烈な引ったくりがやって来ました。
『おぉ !! 真鯛ちゃんはヤッパリ居たのネ!』
『しかも浮いていたし !! 』
と、心の中で呟きながら、ハエ根とシモリの間を疾走し始める真鯛と、一か八かの攻防戦だか騙し合いだかを開始したのであります。
竿の胴の曲がり具合と、竿先のブレと道糸の方向に気を配り、魚の行方を追い以て竿を引き寄せ、磯の上をドタバタと移動をし、ジワぁ〜っと竿を矯めながら、騙し騙し魚を手前に寄せて来る事に成功。
約 7 ・ 8m 程先で浮かせた真鯛ちゃんは、ブルーのアイシャドーを際立たせ、口をパクパクさせながら胸鰭でパタパタと手を振り、こちらへ近づいて来てくれたのです。
余裕を持って玉の柄を持ち、珍しく一発で玉網へ収める事に見事成功!
がっ、しかし、カッチョ良かったのはそこまでで…
50 枠に 60 用の網を使っていたのが仇となり、磯場に無断で繁殖しているフジツボや、亀の手等のアンチファン達により、網を引っ掛けられてしまうという、トラブルに巻き込まれてしまいましたが、何とかカンとか巧い事、アンチファン達から逃れられ、無事に磯の上へと引き上げる事ができました。
まぁ、以上の様にスマートに行かないのは、私にとっては日常茶飯事ですので、もう慣れっこになっています。
釣った真鯛をストリンガーに掛け、釣り座に戻って再開をしてみると、先程迄は遠慮がちだったフグ太郎達が、想像を絶する程の物凄い集団で、一丸となって私の大切な高級道糸とハリスと鉤に、暴行を加えて来るようになったのです。
そこで、仕掛けを B と -B の D.SUS 仕様に変更し、コマセとズラした場所に仕掛けを入れ、道糸を動かさない様にしていても、 6 ・ 7 回に 1 回位の割合で刺し餌が残ってくるという、悲惨な状況になってしまいました。
そんな時でもタマぁ〜に、運良くフグ太郎達に発見されず、深くまで刺し餌が入って行くと、 30cm ほどの口太が釣れてくるのですが、鉤を飲んだ苦痛によるものなのか、脱糞しながら血を撒き散らし、迷惑千万極まりないのです。
また、『フグが瀬際から離れないなぁ』と思って安心していると、今度は 40cm 位のイナダが引ったくって来るのです。
しかし、このイナダも殆どが鉤を飲んでおり、掴んで押さえようとすれば、電気按摩状態で血を撒き散らしてくるのです。
例の如く話しをズラし、この島に生息している『蚊』について、少々語らさせて頂きます。 (脱線その参)
タイドプールに魚を入れて置くと、わざわざ浅い所で半身を出し、横向きになりながら口をパクパクさせ、暴れている事が有りますが、この島でそんな事をしてみようものなら、そんな魚には集団で蚊が襲いかかり、血を吸ってくるのです。
ハエでは無くて蚊が群がり、血を吸っているところを初めて見た時は、そりゃもう、クリビツテンギョウでございました!
以上、粟島の『蚊』についてでした。
そんなこんなで時間が経てば経つ程、陽差しはガンガンと強くなり、無風ベタ凪マッタリ状態となってしまい、勿の論で潮流なんかも有りましぇん。
正に無い無いづくしのオンパレードで、八方塞がりのお手上げ状態となってしまいました。
更に悪い事は重なるもんで、気温の上昇に伴って磯の表面が熱くなり、魚をも襲うブヨや蚊が縦横無尽に飛び交い、私の体からダラダラと流れ出した汗により、ベタついた手首やウナジ等に吸血をしようとしているのか、又は羽が黄金の汗で濡れてしまって脱出が困難になった為なのか、何匹もの蚊とブヨが勝手に了承も無く、キメ細かい美肌に止まっているのです。
磯の上では害虫により、視聴覚とキメ細かい美肌が刺激され、繊細な神経を逆撫でされているというのに、無風ベタ凪マッタリで潮流ナシの海なのに、血を吐きながら脱糞をしてくるフグ太郎や、イナダと木っ端グレん隊が、代わる代わるに釣れて来るので、精神的にも体力的にも、完全に限界を向かえてしまいました。
すっかり戦意も喪失してしまった事で、磯上がりの時間には早かったのですが、午前 10:00 前には道具の片付けを終わらせ、休息を兼ねて食物連鎖に関しての検証を行い、重量を少し軽くした後に、よく偽善行為と間違えられる、周りに落ちているゴミを拾い集めたりして、瀬渡船が迎えに来るのを待ったのでありました。
翌週に開催された、ダイワのバトルカップチヌ地方予選会に於きまして、 10 枚という釣果に恵まれながら、最後の最後に検量をされた選手と、僅か 60g 差で 2 位になってしまい、残念ながら決勝戦行きは、来年以降へと持ち越しになってしまいました。
恥ずかしながら私の場合、 3 連続で玉入れ手前で鉤が外れるという、釣友よりも強い呪いと祟りに悩まされ、試合開始わずか 4 投目で釣り上げた、 1 枚だけでの検量となってしまいました。
『私の事を恨んだり呪ったりしている方々、即座にヤメテ下さい!』
悪霊退散 !!
[最終日の釣果]
真鯛: 60 オーバー 1 枚
価値ある 1 枚でした。 ( 負け惜しみ )
他魚:脱糞散血魚多数
以上で、4日間に及ぶ波乱万丈の釣行は、幕を閉じたのであります。
[モノローグ!的な !! ]
呪いだ祟りだという事柄から、ふと、昨年の暮れに磯場で右往左往しながら、下半身を海に落としてまで、ヒラマサを釣り上げた人の事を思い出してしまいました !!
( 爆笑 )